アニメ『ピンポン THE ANIMATION』根性を支えるのは幸福感だ

卓球どころか、そもそもスポーツに全く興味のない僕ですが、面白かったです。素直にすごい感動しました。最後の一話、最高でした。

 

これは別に卓球というスポーツを凄くドキュメンタリックに描いているわけじゃない。

『ロッキー』もボクシングを描いているというよりは、ある男がプライドを取り戻す話を描いていると思うんだけど、スポーツ物って基本そうなのかもしれない。というか、スポーツのリアルさを求めるならフィクションじゃなくて普通に中継見るだろっていう話だし。

僕の感じとしては、これは友達と、何かに打ち込むことを描いた話だった。

 

最後の2話くらいまでは、高校生が卓球の大会で活躍したり、練習したり挫折したりを描いているから、「卓球のアニメだな」と思って見ているんだけど、ラストにかけてドラマの畳み掛けを見ると、卓球は飽くまで人を繋ぐメディアであって、そのメディアを通して繋がった人間関係の濃厚さを描いているんだっていうことが分かる。

そしてこの繋がりが、本気度によって繋がっている人たちの関係だから崇高さがあって、見ていて圧倒される。

どのキャラクターも尊敬できるし、共感もできるし、でも自分より圧倒的に凄い人たちだ、っていう迫力もある。

 

そして、僕が凄く感動したのは、この卓球に対する全肯定感。

「卓球最高だぁー!!!」っていう感じ。

しかもこれが、勝ち負けとか、立場とか、そんなことを飛び越えたところでの肯定感だから、反論しようがないほど凄くポジティブ。

最後、後日談として、多分大学卒業くらいの時期のキャラクターたちを描いて終わっていく。

ここで、それぞれのキャラクターたちがその後の人生でどう卓球と付き合っていっているかが描かれるんだけど、ここの幸福感が凄い。プロになったやつも、地域でコーチしてるやつも、恐らくもうやめちゃったやつもいるんだけど、全然優劣がない描かれ方になっている。みんな幸せそうで、みんな清々しい。

この後日談によって、このアニメが描いている「高校時代のある一時期」というものを相対化することで、ある種の冷静さというか、それは熱くて濃くて情熱的な時間なんだけど、人生全体で見ればホント一時の事なんだっていう感覚を残してこのアニメは終わっていく。

この一時期で人生が決まるわけじゃないっていうことを、かなりポジティブに伝えつつ、でもこの一時期は貴重で、その後の人生でも手放すことのない物に確実になっているということを伝えている。

こういう感覚こそ、当の高校生たちに見て欲しいもののような気がする。本気を出すことは絶対に意味のあること。そして同時に勝ち負けは、何かに打ち込むということ全体の、ほんの一部でしかないということ。

なんか、こういう事は、その瞬間を生きている最中には気付けなくて、でも後々考えたら、なんでこの事にそんなにこだわっていたんだろう、と気付くようなもので、それを後日談として描くことで見せているのが良いというか、リアリティがあった。

 

そして、スマイルとペコの友情。

この2人の信頼感は、見ているだけでただただ感動する。

「信頼感」ってどんな物語でもだいたい人を感動させる要素だけど、それをどう見せるかっていう事がどの物語でも問題だ。

このアニメの場合は、それはお互いの卓球の上手さに対する信頼であり、ただ卓球を打つということの中にそれを込めている。

 

最後の試合、ペコが膝を痛めていて、「相手の膝を壊してしまうかもしれないような球を君は打てるのか?」とコーチに聞かれたスマイルが「僕は打ちますよ」と答える。相手の弱点につけ込むのか?と聞かれたとき、スマイルが、

「ヒーローに弱点などありません」

と答える、この鳥肌の立つ信頼感。

そして試合中、球を追いかけて転びながら打ち返したスマイルに対して、

「行くぞー!スマイル!」

と全力でその球を打ち返す信頼感。

 

これ、最近何かと話題になる「怪我を美談にするな」的な批判を受けかねないかもしれない。実際そういう風に見る人はいるかもしれない

でも、僕の感想としては、この試合はそういうところを超えている。

ペコはスマイル戦の前に竜と試合をするのだが、ここで「楽しさ」が至上の価値なんだと示される。

竜はむしろ、そういう「耐えることが美談」的なキャラクターである。でもこのアニメは彼の忍耐を苦しくて暗いものとして描いている。美しいものでなく便所として描いている。つまり、我慢を全く美談化していない。

それを救ってくれるのがペコの「卓球が楽しくて楽しくてしょうがない」という打ち方であって、だから、そういう批判は当たらないだろう思う。

 

僕個人的には、この竜が卓球の楽しさを取り戻すところが凄く好きだった。

竜ほど立場的に追い込まれていない人だとしても、何かに打ち込み続けているうちに、何故か楽しさを見失って、我慢我慢と耐えて続けていることはあるんじゃないだろうか。その上で「あ、これやっぱ楽しい!」と思える瞬間もあったりして、そういう幸せな瞬間をこの試合から感じることができた。

最後の方で、キャラクターたちが子どもの頃、卓球を親に教えてもらったり、卓球を始めたばかりの頃のモンタージュシーンがある。

そう、最初は皆、楽しくて始めたんじゃないか。

でも、そのはずなのに、何故か自分を追い込んだり、あるひとつの価値に執着したりして、どんどん辛くなっていく。これは人間の不思議だけど、誰でも経験のある現実なんじゃないかと思う。

最後の後日談が良いのは、だから卓球の楽しみ方、卓球との付き合い方なんていくらでもあるし、本来はそれは幸せなものだろっていうことを、ちゃんと引いた目線で見せてくれるから。

 

スポ根アニメと分類されるのかもしれないけど、このアニメは「根性」で終わってなくて、じゃあ、その根性を出せるのは何でかって言うと、好きだから、楽しいからでしょってトコまで突き抜ける物語になっているのが凄く良い。

絵もいいし、アニメっぽい絵が苦手な人はむしろこういう作画の方が見易いのかも。1クールでスパッと終わるのも気持ちいいし、アニメ観ない人にもおすすめ。