映画『ピクセル』0.1ピクセルくらいの面白さ

これはヒドイ。

確信的ご都合主義なので、もはやそこに関しては何か言ってもしかたないが(全ての要素がそうなので)、そこに目をつむったとしても、ホントに見るべきものが無い。

 

主人公の元ゲーマーが、今は役に立たなくなったゲームスキルを使って、ゲームに則った戦争を仕掛けてきたエイリアンを倒しました。以上。

この結末だと、また映画が始まる前の状態に元通りなだけじゃないか?ストーリーを通して主人公には恋人ができたけど、え?それなのか?この映画の内容は。キャラクターたちの変化や成長もなかったし(むしろ現状肯定の甘やかしだった)、ロマンスに関しても主人公がナンパしてただけだった。

 

とりあえず、この映画内で起きるほぼ全てのことに何の必然性もないし、だから、「アーケードゲームが現実で起きたら面白いんじゃね?」というアイデアを無理くり実現させるためのストーリーだということは、まあ良い。

確かに絵としての面白さはあるにはあったし、この映画は恐らく対象年齢が低めなので、ストーリーの穴は「子ども騙し」ということで納得する。(僕個人的には子どもが対象の映画でも子ども騙しはナシだと思うが、実際子どもが楽しんで観ていたりするのを見ると、まあそれ自体は批判しても仕方ないのか、と思う)

全てが、この一発のアイデアの為のご都合主義だし、ツッコミどころを挙げればキリがないし、そんな見方しても意味ない。

だから、別にそれでもいい。それでも何か、メッセージらしきものがあったり、キャラクターが魅力的だったり、凄い爽快感があったり、最後に凄い勝ち方をするならそれでもいいよ。

でも、何もない。

ハイテンションギャグも全然面白くなかったし。その他演出もいちいちわざとらしくて、あえてそうしてるのかもしれないけど、「バカみたいな映画だな」と思うだけだった。

 

と、もう基本的に全部どうでもいいことを前提にして幾つか挙げると、

そもそも、主人公の特性は昔のアーケードゲームが得意(敵の攻撃パターンを見抜く能力が高い)ということなわけだけど、それほぼ活かされてないよね。

まあ、2Dでのそれと、現実世界での3Dのそれが同じなわけないだろうなんていうのは、この映画に対してはあまりにも高度なツッコミなので、そんなことはどうでもいいんだけど、なんで主人公が現場で闘ってんだよ。

パックマン戦の時なんて、現場でゴーストを運転している主人公に、基地からヒロインが指示を出してて「いや、指示出すのが主人公の仕事だろ!」と思う。

このパックマンに関しては、たしかに最後の勝ち方はゲームやりこんでた感はでているし、この映画の中では一番マシだったんだけど、まず、なんで元ゲーマーで、今電気技師系の主人公があんなに運転上手いんだよ(っていうツッコミも、これまた高度過ぎるんだけど)。

そしてそれ以上に、「パックマンはゴーストより速いんだ」っていうルール設定を完全に覆す展開だった。前に走っても追いつけないやつから、バックで逃げ切れるわけないだろ。

とかツッコんでも意味ないんだった。全部こんな体たらくだから。そう、だから、こういうのはもういいんだよ。

 

問題は、主人公の特性をストーリー上、納得できる形で活かせてないこと。アクションで活躍させるためにキャラクターを使っていて、キャラクターの設定とか無視して、ストーリーや描きたいアクションのために主人公を振り付けしていること。

じゃあ、なんでコイツを主人公にしたのか。

一応ドラマとしては、子どもの頃のゲームの負けをずっと引きずっている主人公が、実は相手が裏技を使っていたと知って、自信を取り戻すという形になってはいるし、それは分かるんだけど、結局このエイリアンの攻撃に対して主人公が「現場で」闘ってしまっているから、ゲームテクニックについてのプライドとストーリー上で起きているバトルが繋がっていなくて、「今それ関係なくないか?」という感じになっている。

しかも、この葛藤の克服に、「ただ生きたいと思って闘うんだ!」的な新世代のゲームの勝ち方を取り入れてしまっているので、尚更過去のプライドとか関係ないじゃないか、となる。これもう典型的な「いろいろ取り込もうとして全部中途半端で機能してない」という脚本パターンのように思う。

新世代の価値観を取り込んで勝つんだったら、過去のプライドを取り戻す(つまり相手がズルをしていたという設定は)必要はなくて、ただ新しい価値観によって、過去の屈辱を乗り越える話にすれば良かったんじゃないか。わざわざ屈辱をなかったことにする意味がないし、それをなかったことにすることで、主人公の葛藤の度合いがむしろ引き下げられている。

それに、エイリアンの侵略に対して主人公がやっていることは、ゲーマーとしてというよりヒーローとしての役割。なので、彼がトラウマを負っていることと、このストーリー上で起きていることは基本違う軸になっていて、その葛藤をこのストーリー上で乗り越えることに、そもそもあまりカタルシスを感じない。

 

そして主人公の周りのキャラクターに関しても、繰り返すけど甘やかされすぎでしょ。

なんか、この事件に乗じて、今まで相手にされなかったのに相手にされるようになりました、良かったですねっていう話で、知らんがなって感じ。

キャラクターたちの幼稚性を肯定しているだけのようにしか僕には見えない。そういう意味で、子ども向けというか、大人になれない大人向け、しかも「そういう生き方も肯定されるべき」みたいな優しさというより、ただの甘やかし。

ストーリーも、キャラクターたちの設定も、葛藤も、社会(他者たち)の描き方も、全てご都合主義。

 

子どもを楽しませようと思って作った映画のように僕には見えるんだけど、個人的に、こんなドラマしか含まれてない映画は子どもに見せたくない。