アニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』大風呂敷を広げてちゃんと畳む

たまたま良い評判を何度か連続で耳にしたので、観てみるか、と思って見始めた。それでよく見るとシーズン5まであって、長くて嫌だなぁ、と思っていたんだけど、シーズン4くらいからノンストップで観たくらい面白かった。

 

序盤で、ある怪しい新興宗教に浮かされている街を主人公のエドとアルが助けるエピソードがあるんだけど、その話は1、2話で終わる尺で、内容が深いとも言えず、「このパターンか」という感じがして先が思いやられた。

というのも「体を取り戻す」というストーリーの軸はありつつも、基本的にミッションクリア型というか、エドとアルが錬金術を使って活躍する数話完結のエピソードで話数を稼ぐ感じでシーズン5まで膨らませたのかな、と思ったからだ。

でもこのアニメは全然そういうアニメではなくて、5シーズン使ってちゃんとストーリーが進んでいく。この最初の新興宗教も後々の展開に接続されたり、その助けた街もかなり終盤で再登場したりする。

そういう意味で、「全く無駄がない」とまでは言えないかもしれないけど、かなりちゃんと話ができているというか、建増しではなく、最初から結末があって、そこに向かって個々のエピソードが進んでいくので退屈なエピソードがない。

 

とにかく、ストーリーはとても面白かった。

思った以上に話がデカくなっていくし、この「思った以上」が本当に大きくて、最後は歴史の話になっていく(ある技に惑星まで利用するし)。ここまで大仰な仕掛けって見たことがないので、特にそれが結実していく終盤、かなりワクワクして観られた。

「弟の体を元に戻したい」という個人的な願いのために行動するエドとアルの冒険が、「賢者の石」というアイテムによってこの世界規模の話と接続し、2人が翻弄されつつも足掻いていく過程を通して、結果的に巨悪を倒していくという話になっている。

 

ドラマの部分に関しては正直ぬるさは否めないというか、特に序盤は少年誌的な熱いだけで薄い心情描写みたいなものに若干の気恥ずかしさを感じるのだが、やっぱりストーリーが面白いからなのか、むしろこの少年誌的熱さに馴染んでいくので、慣れるとわりと乗っかって観れた。

というか「ああ、少年誌の胸熱ドラマってこういう感じだったなぁ」と思い出して懐かしかった。なんていうか、仲間想い、部下想い、家族想いみたいな。そして「仲間のためならなんでもするぜ」的な、「借りた恩は返すぜ」的な感じ。いや、この感じ久しくて、これはこれで様式美だよなぁ、と。

客観的に見たらちょっとサムいやりとりなのかもしれないけど、ストーリーに浸かっていればやっぱり熱いシーンは感動したし、白けず最後まで観られた。

 

このアニメで特に凄く良いと思ったのが、キャラクターを大事にしていること。

例えば、敵を説得して味方にするという展開がけっこうあるんだけど、そこが「説得による感動シーン」だけで終わっていないのが良かった。

例えばアルがある敵2人を「諦めるなよ!」って説得するシーンがあるんだけど、ここはまあ、そういう感動シーンのための展開なんだろうなって思って見ていたら、この説得された2人がかなり最後までちゃんと活躍する。一時のドラマのためだけじゃなくて、しっかりその後のストーリーでも活かされていくあたり、キャラクターに対して愛があるなぁ、と思った。

そう、このアニメ、出てきたキャラクターが本当にちゃんと活かされていくなっていう良さがあって、味方だけでなく敵キャラも、登場直後にはわりとすぐ消えそうだったサブキャラも、クライマックスに向けてどんどん集結していく。

強敵にやられて一旦退場したキャラクターも、敵の強さを見せるためのキャラか・・・と思っていたら、最後にめちゃ良い見せ場を与えられていたりして、「帰って来た!」ってなるようになっている。

だから、キャラクター数が結構多い(少年誌的には普通かな?)と感じるんだけど、ご都合主義的に感じるキャラクターはあんまりいないくて、そこがとても良い。

 

 

キャラクターたちをちゃんと活かすストーリーの為なのか、エドとアルの強さは意外と中程度というか、主役のわりに、敵の中でも警備員的な下っ端の相手に苦戦したりするし、どう考えてもラスボスの側近クラスにも勝てそうにないレベル。

そして、これが少年誌的に意外な感じがしたんだけど、ストーリー中で修行して物凄く強くなる、みたいなところもあんまりなくて、途中、オートメイル(義手・義足)を変えたことで、素早くなって強くなるという場面はあるんだけど、パッと思いつくのはそれくらい。そういう意味では錬金術士しての成長物語という側面は弱い。

ただそのお陰で、「主人公が強くなって活躍して丸く収めました」という単純な根性論的結末にはなっていなくて、本当に、針の穴を通すような勝率にも関わらず、キャラクター全員の活躍によって奇跡的に勝った、というチームプレイの感動エンディングになっている。

そして、最後にエドが下す選択と照らし合わせても、別にエドとアルが強くなる、という要素は、このアニメにおいてはあまり重要ではなかったということも分かる。

 

ストーリーの面白さに並んで、このアニメの魅力の核を挙げるならキャラクター同士の「信頼感」だろうと思う。

僕がさっき少年誌的ドラマと言ったものの中身は多分これで、兄弟の信頼、親と子の信頼、上司と部下の信頼、王と側近の信頼、師匠と弟子の信頼。

そして、この信頼感が全く揺るがないあたりが、ややドラマとして薄く感じる部分でもあるんだけど(決定的な裏切りってなかった気がする)、逆に幸福なキャラクター関係でもあって、見ていて気持ち良い部分でもある。

「皆で協力すれば、巨悪だって倒せるよ!」という前向きさ。これ自体やや軽薄に感じても、このストーリーの大仰さで見せられると、「た、確かに」となってしまうくらいのパワーはあった。

それで且つ、キャラクターたちが「巨悪を倒す」という大義を共有して動いているというよりは、それぞれの個人的な守りたいものや、通したい信念に従って行動していった結果として巨悪を倒す、というのが良くて、「一致団結!」というよりは、個人が個人のままゆるく繋がって戦っているのが良かった。

だからこそ、それぞれにキャラクターにコマ感がなくて、ちゃんとそれぞれに魅力的だった。

5シーズンの長さだからこそ描ける面白さなんじゃないかと思った。観てよかった。