映画『パーフェクト・メモリー』ミステリアスな雰囲気だけで内容はショボい

綺麗な映像と雰囲気以外は特に観るとこないのではないか、という感じの映画だった。

記憶喪失の男が主人公で、一体周りで何が起こっているのか分からない中、記憶喪失の原因となった事故、夢に見る娘、信用できな妻などの謎が散りばめられるのと同時に、妻の猟奇的な行動が始まり、それにともなって主人公自身も危機的状況に陥っていく。

と、書くと、凄く面白そうなんだが、いやこれが、結局どの面白さを見せたかったのかがよく分からんストーリーになっている。

 

記憶喪失によって自分が何ものなのか定かでない、という主人公の状況は、それ自体かなり面白いし、観客を乗せやすい設定だと思う。というのも、観客も映画を見るまでキャラクターたちのことは一切知らないのだから、主人公の不安感に観客は乗りやすいわけであるし。

記憶といえば『ガス燈』という映画があって、これなんかは傑作だった覚えがある(すごく前に観たので詳細に覚えていないが)。

まず、この主人公の記憶喪失が、凄い巧妙に仕組まれた何かだと思って僕は観た。というのも、妻がビデオを編集していたり、主人公に全く家の記憶がないという描写などから、ちょいSF的な大掛かりな展開だと思っていた。

しかし、実はこれは本気でただの記憶喪失だった。妻の猟奇的な行動のいくつかは、本当にただ記憶を戻させようとしていただけだった。

という事実はこの映画のオチに関わるので書くのもアレなんだけど、個人的に最後の種明かしで驚くどころか、なんていうか、「スケール小さっ!」となったので、別にもういいんじゃないかっていう気がしている。

事故も偶然っぽいし、事故の後、妻が何をどう処理してストーリー内の時間に繋がっていくのかも特に描かれないし、いや、ホント偶然やラッキー(妻にとっての)が重なって、こうなりました。そして、そもそも偶然だったので、オチもこんな感じです、っていうぐらいのオチでしかない。

 

そして、サイコパス妻の行動。

サイコパスって基本凄く用意周到だったり、上手く人を騙したり、余計な手がかりは残さないようにしたりとか、憎たらしいほどに賢いっていうのが僕のイメージなんですが(だからこそサイコパス映画はハラハラするんですけど)、この映画の妻、いろいろずさん過ぎて、そういう憎たらしさがなく、キャラクターとしての魅力が全然ない。

というか、「あそこで主人公がこう行動していたら、完全にこの話終わってたよね」という展開が多くて、このストーリーを成立させる為にキャラクターが振り付け通り動いているっていう風にしか見えず、脚本的な上手さも全然感じなかった。

グロいのが観たい人にとっても、恐らく拷問シーンはかなり物足りなくて、普通に『ホステル』とか観たほうが良いよねっていう感じ。(僕は拷問系は苦手なのでそういうシーンがなくてよかったけど)

ラストシーンは「サイコパスの狡猾さ」的な描写で妻が去っていくシーンで終わるのだが、「いや、たまたまじゃん。お前が偶然先に目覚めたからだろ!ずさん過ぎるくせに何気取ってんの!」とツッコまずにはいられない。

 

妻がちょいちょい口走る豆知識にしても、(オチまで見ると尚更)説得力のない拷問部屋にしても、思わせぶりな対応で、結局はすべて終わってから種明かしのためだけに置かれたキャラクターだった刑事にしても、意味深な描き方をしているわりに、大枠のストーリーがショボいから、雰囲気だけ良くて、意味がない感じになっている。

描き方が重厚だから、多少退屈でも「このタメが後々の展開で気持ちよく回収されていくのかなぁ」と期待しながら観るのだが、特に何もなく、ただ退屈なだけだった。