映画『ケープタウン』エグい前フリと化けるラスト

初っ端からなかなか残酷なシーンで始まるし、死体や暴力もきっちり描かれるので、かなり重めな映画。とはいえ、「痛い!痛い!」的なシーンはないし、ある程度グロいのが大丈夫であれば見れる感じ。

南アフリカが舞台。あらすじからも人種差別的な話が絡んでくるのであろうということは明白だが、この映画の場合、人種差別自体を掘り下げるものではなく、そういうバックグラウンドがある上でのクライム・サスペンスという感じ。

明け透けに言ってしまえば、犯罪組織の作っている麻薬に凄く差別的な属性が負わされていることとか、主人公のアリに差別で強烈に苦しんだというキャラクター設定がなされていたりする。それがラストのモヤモヤするカタルシス(矛盾してるが、矛盾しているのだ)にも繋がる。

 

個人的に、この映画の印象として、そういう差別の問題というよりは、治安のヤバさの方が強烈だった。そういう意味で差別問題について考えたい人や普段から考えている人からすると、そのへんは空振るかもしれない。

最初の見せ場として、浜辺でヤバそうな集団と撃ち合いになるのだが、撃ち合いに至る容易さが凄かったし、これ下手したら刑事たち全員ここで死んでたなっていう展開になっている。

お昼ですよ。開けた浜辺ですよ。という驚きがあった。確かに、ちょっと怖そうな集団に対しての聞き込みではあるわけだけど、ゆっても場所の空気としては穏やかな明るい浜辺。だから、刑事が3人で聞き込みとかしてても危険な感じはしない。

そんな空気の中、ちょっと相手が怒っちゃって、銃を向け合う。それでもまあ、緊張感はありつつも、一応なんとなく「お互い落ち着こう」的な流れになるのかと思いきや、無抵抗の刑事をスパスパ切っちゃう。「え?!」ってなりました。

 

そういった暴力とか、銃撃戦とか、そういう見せ場はあるから、そういう意味で退屈ではないんだけど、正直、サスペンスとして捜査の進展自体はかなり退屈だった。

主人公たちの捜査で事態が明らかになっている感じがなくて、基本的に、途中でチームに加わったスーパーテックウーマンのお陰で「実はこことここが繋がってて〜」という話が説明されるだけだから、あんまりストーリーの中で謎が解けていくような面白さはない。

基本的に刑事たちがやってるのって「この写真の人知ってる?」って聞いてるだけだったんじゃないか。あとまあ、現場に踏み込むことか。そういうことで、写真を見せてるか銃を撃ってるか、みたいな展開しかなかったような気がする。

 

なので、正直なんか微妙だなぁ、とクライマックスにかけて感じていた。

アリのキャラクターも、差別でとんでもない目にあっているのに、許し、正しく生きているというような立派な人なんだけど、そのキャラクター設定自体が正直記号的にも感じられた。

ただ、これが実はラストにかけての前フリだったのか、ということがクライマックスで分かると、「なるほど、この場面にすべてを導いていたのか」と一気に映画全体のクオリティが一段上がったような印象があった。

そう、アリが毎朝ランニングマシーンで走っていたことも、ちゃんとラストの説得力に繋げているのか、みたいな。アリがあそこまで聖人として描かれていたのも、このラストの振り幅のためなのか、というような。そういう映画内のいろんなことが最後に結実してくるような気持ちよさがあった。

 

とはいえ、あのダンサーとの微妙な感情の高ぶりは何だったのだろうかとか、ブライアンの乗馬女子はその後登場しなかったのではないかとか、あのホームレスの男性は別にいなくてもストーリー上問題なかったのではないかとか、いろいろ蛇足に感じる部分もあった。

 

ただやっぱり、ラストの砂漠のシーンを見られただけでも全然良い。

いや、あれは怖い。逆『ローン・サバイバー』だった。マジか。まだ来るのか、っていう恐怖感が伝わってきた。

ややもすれば間抜けに見えなくもないシーンだったと思う。なにせ砂漠で歩いてるから画面のスピード感が遅いし。なんかオッサン2人がノソノソ歩いてて何なんだろう、みたいな。

でも、僕にはこれがちゃんと静かにキレた男の凄みに感じられた。

そして、最後、僕はここでアリがどういう決断を下すのか分からなかった。そして、「そうか・・・。」という結末で。う〜ん。なんかモヤモヤするなぁ。きっとゴッサム・シティジョーカーが笑っている。そんな感想を持った。