映画『ラブ・アゲイン』恋の錯綜を安心して見られる映画

ライアン・ゴズリングに釣られて鑑賞。あらすじを読むだに期待していなかったけど、けっこう面白かった。
ライアン・ゴズリング、スティーブ・カレル、エマ・ストーンと、僕が好きな俳優さんたちが出てきて、それだけでもだいぶ満足感があったので、ストーリー以上に演技を見て楽しんでいたのかもしれない。
 
ストーリーとしては本当に教科書的というか、パターン化されていて既視感はある(だからつまらないということでは当然ない)。
まず中年夫婦の破局から始まり、夫のキャルが男を磨く。何度かヨリを戻そうとするワクワク展開があるも、その度邪魔が入る。が、最終的にはハッピーエンド。
絵に描いたようなラブコメ
 
離婚を申し込まれた冴えない傷心中年のキャルを、遊び人ジェイコブが手助けしてカッコよくする、という男性版『プラダを着た悪魔』的な展開が前半のキャンディーになっているわけだけど、ビックリするのは、ジェイコブがキャルを助ける理由が特にないということ。
いや、なんとなく理由っぽいことは言うんだけど、明確な動機とは言い難い感じで、「んなアホな」と思わずにはいられない。
普通はなんとなく「助けなければいけない状況」にキャラクターを追い込む(脚本的に)と思うんだけど、そこはジェイコブの「いや、なんか見てられなくて」くらいなセリフで終わらせる。んなアホな。
 
なのでまあ、ストーリー的にはこのくらいの甘さはある。
そして、実は離婚しようとしていると言っても、実は妻のエミリーもキャルのことを憎んでいるわけでもなく、退屈さや不倫をきっかけに離婚を考えているだけであるから、そこらへんで感情的な葛藤は少ない。
数回ケンカになるが、それは夫婦生活のことではなく、別居後のキャルの遊びのせいであって、そういう意味では、根本的に夫婦生活上に解決しなければいけない課題がない。なので、実はそういうシンドさはこの映画の中にはない。
エミリーの「離婚しよう」っていう判断がどう考えても早すぎるだろ、と思う。その前に夫婦で話し合えば解決可能だったのでは・・・、と感じる。
全体的に、キャラクターの動機が希薄、そういうストーリー的な甘さがある。
 
と、悪口を言っているが、いや結構面白かった。
まず、スティーブ・カレル演じるキャルのもったりした魅力が良かった。っていうか、スティーブ・カレルが最高なんだけど。
序盤で、離婚を申し込まれたキャルが、車の助手席から飛び降りるというシーンがあって、そこが最高だった。落ち方が劇的じゃなくて、ホントにノソっと落ちる感じの哀愁が良い。
スティーブ・カレルの優しさが全面に出ている映画だった。それだけでも十分。
 
ライアン・ゴズリングは説得力のあるチャラ男を演じていた。でも、チャラ男なんだけどライアン・ゴズリングって目がトロンとしてて優しそうだから、意外と嫌な感じがしない。
そしてエマ・ストーン。美人で優秀な女性ハンナとして登場。序盤でチャラ男ジェイコブに口説かれるも一蹴。といっても、当然のごとく、最終的には結ばれるのだが(この辺も教科書的)。
ここで、ハンナによって遊び人ジェイコブの価値観が変えられるという展開がある。いわゆる「真実の愛」的な展開なんだけど。ここの描かれ方がけっこうロマンチックで個人的には好きだった。
ハンナは彼氏と別れた勢いでジェイコブを逆ナンパする。しかし、優秀さ故にジェイコブの落とし戦略を全部見抜いてしまい「ここでこれやると皆落ちるの?」とか「次の作戦は何?」とジェイコブの出鼻を全てくじいていく。
とはいえ、お互いやる気でいるので一応ベッドに行く。そして、直前まで行くもハンナがお喋りをやめず、ジェイコブも何となく会話を始めてしまい、結局朝まで語り明かしてしまう。
ここで、セックスより会話の方に価値が置かれ、ジェイコブは女性とちゃんとした関係を持つことの価値を受け入れて、マトモになる。
これは、僕がエマ・ストーンを好きだからかもしれないが、なんか説得力があって良かった。ハンナのチャーミングさが光っていて、たしかに、性的な魅力というより、ずっと笑いながら話してて欲しい的な感情が湧いてきた。
 
そういえば、このセックスより会話(というか言葉)という展開はキャルとエミリーの間にもある。
学校での保護者面談に行ったら、学校の先生がキャルの遊んだ相手だった、というシーンがある。もちろん、そこで一旦エミリーが怒って帰ろうとする、という展開になる。だが、キャルがエミリーを呼び止め、弁解すると、エミリーもそれに納得しそうになる。
だが、良い感じになったところでその遊び相手の先生がやってきて、キャルがエミリーに言っていたある褒め言葉を、口説くために遊び相手にも言っていたということがバレてしまう。
そこでエミリーは愛想を尽かして帰ってしまう。
ここでは、「性的な関係を持った」ということよりも、「大事な言葉を安く使われた」ことの方が、決定的にエミリーを傷つけるという展開になっている。
この映画の中では、性には対して大きな価値付がされていない。だからこそ、ジェイコブの「更生」を観客の僕はそこまで違和感なく受け入れられるのだと思う。
こういうチャラい映画のわりに、意外にも「体より心」という価値基準が通底している。
 
 
この映画って、登場人物みんなが誰かを好きで、その関係が絡まっているという楽しさがある。ある場面でキャラクターが全員集合し、全員の気持ちや立場が明かされ、乱闘になるというシーンがあって、ここがちゃんと笑えた。
そして、悪役がいない。エミリーの不倫相手のリンハーゲンさえ悪い人としては描かれていない上に、名前を絶えずイジられるというオイシイ役になっている。
いろいろ緩いところはあるけど、楽しめる映画だった。というか、ライアン・ゴズリングエマ・ストーンとスティーブ・カレルを同時に見られるだけで、僕は大満足だった。