映画『マイ・インターン』理想像と理想像の心地良い交わり

とりあえず面白くはあった。
が、葛藤が弱い(本当の危機がない、悪役がいない)ゆえの薄味さがあった。深く感銘を受けたりするような映画ではない。サクッと気持ちよく観る感じの映画だと思う。

僕は男性なので、こういった映画を観ると、どうしても女性の感性を意識しながら観てしまう。女性といっても飽くまで作り手側が想定する(ターゲティングされている)女性の感性だが。

「こういうことを言われると嬉しいのか」とか「こういうことに充実感を感じるのか」とか「ここで弱さをみせるのがカワイイのか」とか「こういう感じに憧れるのか」とか。見当違いな部分もあるだろうけど、なんとなく女性の(生き方の)ひとつの理想像なのだろうなぁ、と思って観てしまう。

もちろん、ひとつの理想像であって、必ずしもそうありたいとか、現実世界でそうされたいとかではないんだろうけど。
(僕は最近ライアン・ゴズリングが好きで「カッコいいなぁ」と思いながら観ているのだけど、別にライアン・ゴズリングになりたいわけではないし。)
まあ、なんかそういうのにグッとくる感性があるんだろうなぁ、と思いながら観てしまう。

そういう意味でも、主人公のジュールズがやや完璧過ぎるあたり、あまり感情移入はできない。あくまでヒーロー(あえてヒロインではない)として観てしまう。それもグッと入り込まず距離感を持ってサクッと観てしまう鑑賞態度に寄与している。といっても、共感はできるから退屈ではない。みたいなバランス。

そういえば、自転車に乗っている設定は後半どっかに行ったな。

完璧といえば、もうひとりの主人公ベンもそうで、「こう老いることができたら理想的だな」と僕は思ったし、きっと女性にとってもジュールズがそうであったように、「こういう人がいて欲しい」と思えるようなキャラクターになっているのだろう。高齢であるが故の「安心感」(精神的にも性的にも)がこの映画の癒やしのトーンを作っている。

そして鏡に向かって愛想よく話す練習をするのは、もしかして『タクシードライバー』のパロディなのだろうか。そうだとしても特に感心はしないけれど(文脈がないし)。

映画内の問題や展開は、結局この2人の完璧さ(有能さ、強さ、優しさ...)を誇示するためにあるのであり、ストーリーとしての出来栄えはそこまで良くない。安易な展開も多いし、見え透いた場面も多い(テーブルを片す展開やら、公園でママ友に一言いってやるシーンのわざとらしさ等々)。

そう考えれば、この映画はフィクショナルな完璧さの押し売り映画とも言える。

と言うと悪口だが、最初に書いた通り、それなりに面白かった。際どいシーンもなく誰とでも安心して観られる。が、見返したいかと言われると、もういい。個人的には『プラダを着た悪魔』の方が好き。