映画『フロム・ダスク・ティル・ドーン』振り切れた悪ふざけ

タイトルだけはずっと知っていたので、なんとなく観てみた。こういう映画か。どこで知ったかも覚えていないけどタイトルだけでも耳に届いて意味は分かった。めっちゃファンいそうだもん、この映画。

まあ、タランティーノが出てきた時点で、それっぽい映画かもと思って観ていたが、ゆっても序盤はけっこうハードなロードムービーというか、ジャンル映画っぽいコッテリした雰囲気や背後で建物が爆発するなど過剰な演出はありつつ、でも真っ当なストーリーかなぁ、と思っていた。

キャラクターやその関係性の描き方も、定型的に感じつつも、でもちゃんとやってる感じ。説明っぽいセリフが多いのも、敢えてのチープさなんだろう、というぐらいで、わりと真剣に観ていた。

実際、弟のリッチの気色悪いおっかなさとか、兄のセスとリッチの力関係とか、そのバランスから生じるハラハラ感とか、普通に緊張感があったし、ある難題を乗り切ったところの、被害者・加害者なんだけどちょっと打ち解けてきた感じや、誘拐された家族の父親の心配をよそに、子どもたちの方が悪人たちと打ち解け始めたりして、そういう関係の動きみたいなものも面白かった。

 

なのだが、やや長いセクシーシーンの後に(タランティーノって脚フェチなんだっけ)、目を疑う展開になっていって笑った。

いや、バカにしているんじゃなくて、作り手も笑わすつもりで作ってるでしょ。本当に意外でビックリした。まあ、ちんちん銃のあたりで嫌な予感はしていたけど。

これは、何人かでゲラゲラ笑いながら観る映画だ。僕はひとりで映画を観る人だし、こういう可笑しさをあんまり映画に求めてないので、好きじゃないし、特に評価しないが、でも好きな人にはたまらんだろうなぁ、と感じた。

「敢えてゲテモノ映画を評価する方が通っぽい」的なノリで褒める人もいるかもしれないが、いや、やっぱりこの映画は、序盤からの急展開にしても、その後のキャラクターたちの真剣さと起きている事のバカっぽさが画面の中でフルアクセル、フルブレーキで蛇行していく感じにしても、ギャグの演出にしても、「なんでっ?!なんでっ?!」とツッコませる小ネタの数々にしても、すごいハイセンスだと思う。

敵の造形にしても、気持ち悪さはあるが全然怖くはない、みたいな絶妙な感じ。「え、これ全身タイツかも」と見えるようなシーンがあったりして、でも、結構ちゃんと作ってあるようにも見えるし、いや、これも含めてギャグなんだろうか。でも全体的に熱気が伝わってくる。

大真面目さが笑える。だから、逆に水鉄砲とかはさすがにふざけ過ぎたんじゃないかと個人的には感じた(「聖水」という前フリはちゃんとしているからいいんだけど)。「反撃じゃー!」のワクワク感はあった。

こういう映画にありがちなクリシェをいちいち全うしていく感じも良い。ラスト近くに仲間を撃ち殺すというシーンもあるんだけど、なんだろう、全然悲しくない。全然苦しそうじゃねーし。撃ち殺す方と殺される方の演技の温度差が凄かった。

ロバート・ロドリゲス監督といえば、『プラネット・テラー』は観たことがあって、そっちもゲテモノだけど、僕はそっちの方が好き。でも、こっちの方がより悪ふざけが振り切れていると思う。これを観てから『プラネット・テラー』を観たら、けっこうちゃんとした映画に感じるんじゃないかって思う。

 

全て終わった後に、助けに来たセスの取引相手に、セスが「なんで、いくらでもある落ち合う場所の中から、この店を選んだんだ!」とキレるシーンがあるのだが、なんで僕は、いくらでもあるネットフリックス上の映画の中からこの映画を選んだんだろう、と思いながらセスの怒りを見ていた。